2007/09/27 (Thu) マイルス・デイヴィスの不思議

意外と初めて気づいたんだけど、自分が最も多くCDを所有しているアーティストだったりする。

ジャズメンの中では当然と言えば当然。なぜならば、最も長い期間第一線で活躍した人だから。マイルスより長い活動暦の人はもちろんいるが、マイルス以外は「全盛期」がハッキリしていて、その時期以外のアルバムは買うに値しなかったりする。その点マイルスは、ほぼその全活動期間においてジャズをリードしていた。新しいジャズのスタイルが登場した時、大抵その中心にはマイルスがいた。だから買うべきアルバムが多いのだ。


それは分かる。でも、ディランやストーンズより多いというのが自分でも意外。

というのも、マイルスを愛聴した・マイルスにのめり込んだ記憶がないからだ。

押しも押されもせぬジャズ界のビッグネーム。ミーハーファンから硬派なファン、古いジャズファンから最近のクラブ・ミュージック・ファンまで虜にし、作品の質も価値も高く、それは俺だって認めている。凄いとは思う。

でも、マイルスって、普段そんなに喜んで聴く(笑)?




それでは時代毎に作品を追っていきましょう。


まずは「クールの誕生」
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クール・ジャズの代表のように語られる事も多いが、実はクール・ジャズの本質はここではなく、むしろスタン・ゲッツの方にある。実際、俺がクール・ジャズを聴こうと思って取り出すアーティストはそのゲッツであったり、リー・コニッツであったりする。




次にハード・バップ。

普通多くの人が「ジャズ」と聞いて想起するのはこのスタイル。ジャズが最も成熟し、かつ勢いのあった時代の、まさに一番オイシイ部分。

この時期のマイルスのアルバムで俺が最も好きなのは、プレスティッジ時代の俗に「ing四部作」と言われるもの。

代表的なのは「クッキン」
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「リラクシン」
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だろうか。ほかに割りと好きなのは、

「ウォーキン」
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「バグス・グルーヴ」
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(こうやって見ると、コロンビアよりプレスティッジの方が好きだな。)


しかしながら、ジャズ界自体の全盛期である故、他のジャズメンのこれ以上のお気に入りアルバムはまさに無数に存在し、マイルスを手に取る事は稀なのだ。




次にモード時代。

このモード奏法こそ、まさにマイルスが切り開いたと言っても差し支えないスタイルなのだが、正直に告白すると、この系統の音楽が俺はあまり好みではない(スマン)。実際、マイルスを追って活躍した、俗に「新主流派」と言われる連中(例えばハービー・ハンコック、ウェイン・ショーターら)の作品を俺は愛聴した覚えがない。マイルス同様、その作品の価値を否定する気は全くないんだけどね。

これはひとえに俺のリスニング・スタイルに原因がある。一言で言うと「ながら聴き」が好きなのだ。じっとスピーカーの前で音に集中するような聴き方が苦手なんである。そういう聴き方には、こいつらの「意欲的すぎる演奏」はなじまないのである。ホントにすまん。

ただ、ジャズの中心的価値は明らかにビ・バップおよびハード・バップ時代にあって、60年代以降はジャズが死につつある時代という事は言える。

そんなモード時代の中でも比較的お気に入りなのは、

「カインド・オブ・ブルー」
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か、「マイルス・イン・ベルリン」
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といったところか。




次に「電化マイルス」。

ロック的ともファンク的ともアフリカ回帰ともとれる、まさにジャズの表現を一気に押し広げる大革命だ。ジャズに疎い人はこれを聞いてジャズとは思わないだろう(笑)。

もの凄い内実を孕んだ音楽なのに、彼の後輩連中はマイルスが「電気楽器を使ってロックのようなビートを奏でた」という表面だけを真似、結果「フュージョン」などという腑抜けたスタイルが出来上がった。が、マイルスのやろうとしていた事とは似ても似つかないのは言うまでもない。つまり、このスタイルにおいてはマイルスだけがまさに「ワン&オンリー」なのだ。

この時期のお気に入りは、

「ビッチェス・ブリュー」
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と、「オン・ザ・コーナー」
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だな。


この時期、このスタイルに関しては、マイルスの他に選択肢はない。だからマイルスを聴くほかないんだけど、こんな凄い音楽、普段よく聴くかい(笑)?

凄い音楽と愛聴盤は重なる事だってあるけど、重ならない事だってあるでしょ?

あと、「ジャズが聴きたいなぁ」と思った時、こういうのから選ぶって事はしないよね、普通。




そういうわけで、超大物で、沢山所有しているにも関わらず、愛聴する事のないマイルス・デイヴィス。不思議ですね。

そんな俺の疑問に答えをくれた一文がある。確か後藤雅洋だったと思うのだが、「カンが鋭く頭のいいマイルスは、その活動初期にチャーリー・パーカーと出会い、『同じ事をやったのではこの人には絶対勝てない』という事が分かってしまったのではないか。だから、『パーカーがやり残した事』全てをやったのではないか」との事である。もちろん彼の憶測なんだけど、そうであればめちゃめちゃスッキリする。

つまり、ジャズという音楽の全盛期であるビ・バップとハード・バップは、まさにチャーリー・パーカーの遺産である。ジャズの中心、ジャズらしさとはまさにパーカーそのものであり、そのパーカー的なものを避けて、かつ、それ以外の周辺の事を貪欲にやり尽くしたマイルスという人は、凄い人だけれども、どこか最も大事な何かを欠いた(意図的に避けているわけだから)感じがするのは、至極当然のような気がするのだ。

反対に、確か中山康樹だったと思うが、「マイルスを聴け!マイルスにはジャズの全てがあるから」なんて言ってる人もいる。確かにマイルスはジャズ・シーンをリードし続けたわけだから、「ジャズの全てがある」ように表層的には見えるかもしれないが、後藤の論が正しいとすれば、「ジャズの一番大事な部分以外の全てがある」って訂正した方がいいんじゃないの?




凄いことを認め、沢山CD持ってるのに、聴かない理由はそういう所にあるのかも知れない。








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